田舎と季節のある暮らし  〜あぜ道のある風景2011〜




            
              
     第3話 拝啓  倉本聰様

 
はて、倉本聰とは・・。「北の国から」「優しい時間」などのテレビドラマを書き、北海道で富良野塾を主宰。自然の美しさ、過酷さ、田舎の抱える問題、そこで暮らす人々の悲喜交々をきめ細かく書き上げる脚本家です。
 
十五年前、まだ有機農業という言葉も世の中に認知されていなかった時代。私達夫婦がその分野にふみ出した頃、倉本作品の中では飽食、浪費、豊かさへの疑問を投げかけていました。妻に去られた主人公が北の大地で畑を耕しながら、周りの人々に支えられ二人の子どもを育ててゆく物語。倉本聰の代表作「北の国から」です。
 
私達夫婦は生まれたばかりの子ども達を育てながら、設備投資と規模拡大、その先にあるであろう右肩上がりの売り上げを夢見、しかしなぜか求めれば求めるほどまだ足りない、まだ足りない。そんな時、埃と汗にまみれ、男手一つで子育てをする主人公に釘づけになりました。人の手に負える範囲の幸せにほっと安心した気がしたのです。
 
私達は規模拡大から大きく舵を切りました。あれから十五年。子ども達も成長し一人立ちし始めました。けしてお金が潤沢にあったわけではありませんが、家族が膝を寄せ合い、知恵を出し、時間を共有して貴重な歳月を過ごせたと思います。心技を伴わない規模拡大がいかに危ういか今ならよく分かります。
 
倉本先生とは当然お会いしたことはなく、何十万といるファンの一人。まさか送り続けた作品に勇気づけられ、一組の夫婦が農民として一人前に育ったとは微塵もご存知ない事です。想いの送り手がいれば受け取る者もおり、こうして育てていただいた事。ありがとうと伝えたいです。
 
先生、鹿児島は今梅雨の季節。この雨が上がれば夏の日差しです。南の土地には南の農民のドラマが面々と続いています。


                 農業共済新聞鹿児島版  2011.06.08掲載



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