田舎と季節のある暮らし  〜あぜ道のある風景2011〜




            
                 
  第4話 「女湯に浮かんでみれば」

女湯に浮かんでいるのは・・・私じゃないんです。昨年読んだエッセイのタイトル。仕事を終えた夜、布団の上で本を開くと銭湯の女湯で繰り広げられる人間模様にゲラゲラ、ニヤニヤ。健康的に艶かしい。
 東京下町や日本各地、著者が出会った銭湯の女達。ばあ様方も来れば、仕事帰りの若い娘や女子大生、幼子を連れた母親。皆、それぞれの暮らしを抱えて入って来る女湯。髪を洗い、体を洗い、それだけでないのが湯屋。常連、新参者が入り混じり、本の中には盛りだくさんの小さな事件が湯のごとくほっこりと書かれています。

 
鹿児島では銭湯=温泉というくらいの温泉大国。私も嫌いなほうではないけれど、日々の中では家の風呂がほとんどで湯屋に行くのは時間のできた時か、よほど畑で体が冷えたか肩こり腰痛を覚えた時ぐらいです。
 確か、一昔、二昔前は、農閑期になると腰を据えて温泉に行く習慣が残っていて、義母が近所のおばさん達とバスを乗り継いで、日がな一日かけて行っていたような。弁当、蒸かした唐芋、漬物、黒飴、駄菓子も荷物に詰め込んで、おしゃべりも賑やかにおでばいする光景がありました。

 
本の中の銭湯は今なお賑やかに語る女達と人の感情が絡み合い解し解され、まるで湯に浸かったように気持ちを緩めてくれます。
 
なかなか毎日、湯を楽しむ、という訳にはいかないでしょうが、折々、締めよく仕事を切り上げて、少し陽のあるうちにゆっくりと温泉に体を浮かし、湯上りは夏ならビール、いや梅酒かな、氷を二,三個入れてカラカラ涼やかな音などたてて、体と気持ちを解きほぐせたらどんなにいいでしょう。思えば野良仕事と湯、これほど似合うものはない。後は眠くなるまで本などパラパラ。「女湯に浮かんでみれば」老若男女どうぞ御一読を。

*「女湯に浮かんでみれば」掘ミチヨ著(新宿書房)


                 農業共済新聞鹿児島版  2011.07.06掲載



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