田舎と季節のある暮らし  〜あぜ道のある風景2011〜




            
     
         第6話  大人の階段

 希望、挫折、初恋あるいは失恋。どこか未完成で行く先が見えない。そんな階段をあなたは爽やかに、雄々しく駆け上がったでしょうか。今に思えば、ほろ苦く、甘酸っぱい記憶が去来するでしょうか。しかし、大人への階段はそれだけにあらず。アラフォー、アラフィフになっても大人の階段があることに私、気づきましたよ。
 
一年ほど前、なんだか文字がかすみ、ハタと思い、飛び込みで入った眼鏡屋で老眼鏡をあててみると文字のピントがくっきり。「あちゃー。老眼だよ」その話を妹にすると「いやー、おめでとう。順調に成長しているねえ」爽やかすぎるくらいに言ってのける一言が腑に落ちない。
 
心も体も成長する時が階段を上がる時、弱ってくると階段を下りるような、そんな気持ちになりますが、妹に言わせると「違うよお。順調な成長だよ。下りる時はないのよ。上って、上って、今まで見えなかった物が見えてきて、楽しいじゃん」。
 
妹も立派な四十代。教員、民間企業と転職を経て自分で仕事を起こして十年というおひと。山あり谷あり踏み越えて来た彼女から聞くと説得力も数倍です。どんなふうに階段を上がるかはその人次第ということでしょうか。
 
四十半ばまできたのなら、たおやかな大人の女に成長したいもの、そう思えば衰えも心なしか受け入れられるココロモチが湧いてくるから不思議です。それ以来、私は人生初の眼鏡ライフを楽しむことにしました。
 
この先、どんな階段をどうやって上がってゆくでしょう。子ども達の結婚、出産。母から祖母へ、いつか私も姑と呼ばれる日も来るはず。二十年後、三十年後の私がこの原稿を読んでなんと言うでしょう。「まだまだ青かったわね」と笑うでしょうか。それはその時のお楽しみ。
 
甘酸っぱい大人の階段話でなくてごめんなさい。さて、夜が明けてきました。秋冬野菜の準備は待ったなしです。今日も元気に畑に出ましょう。

       



                 農業共済新聞鹿児島版  2011.09.07掲載



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