第7話 田舎(ここで)暮らす
先月は幾ばくかの衰えに動揺する大人の階段でしたが、今回は正真正銘大人の階段を駆け上がる子ども達の話です。
我が家には娘四人、息子一人の五人の子ども達がいます。長女が23歳、以下22、20、19、13と続きます。どの子も親の手元を離れ、まさに自分の足で立ち始めたばかり、自分の実力も限界も見えない、何者になってゆくのか本人達も親である私達にも分かりません。農業をやりたいという子が現れてくれれば嬉しいですが、今のところは、それぞれの人生と思い口は挟んでいません。
一年前、短大卒業後、会社勤めをしていた長女が退職しました。あっという間の出来事で止める間もありませんでした。菓子加工がやりたい気持ちを曲げるわけにはいかなかったようです。家に戻り農産加工の形で菓子製造するとのことで歩み始めました。製造と営業の二足の草鞋です。脇が甘いというか、スキだらけです。親も子も修羅の形相でぶつかりながら一年が経ちました。数ヶ所の道の駅と数店舗のスーパーとお取引が始まり、仕事の合間に菓子の研修を重ね、少しは手順、段取り、お客様とのやり取りも落ち着きが見えてきました。 小さい頃から、田舎で暮らして行く術を常々語ってきましたから娘にしてみれば当然の選択肢だったのでしょう。夢をる事と、現実に変えてゆくことの凄まじさは、自分達も経験してきたはずでしたが、いざ我が子が同じ自営業という選択をした時、あたふたとしたのは他ならぬ私達でした。
これから次々と子ども達は巣立ちのダイビングを試みるでしょう。親も腹をくくらなければ子どもが駆け上がる階段の歩幅にはついてゆけそうにありません。私が駆け上がるわけではないのですけどね。受け留めるのは親の仕事でしょう。子ども達はどんな道を選ぶのでしょう。しばらくは気を揉む巣立ちの時期が続きます。
農業共済新聞鹿児島版 2011.10.05掲載
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