田舎と季節のある暮らし  〜あぜ道のある風景2011〜




            
              

           第10話  新しき春

 皆さま、穏やかに新しい年をお迎えの事とお喜び申し上げます。驚くばかりの2011年を見送り、気持ちを新たに、年を越した方が多かったのではないでしょうか。我が家でも恙無く年を越せることを感謝しつつ、深く頭を垂れる想いで年越しいたしました。
 暮に「バイトが減った」と不安げに電話をかけてきた息子からは家を離れて初めての写真が送られてきて、友達と一緒の笑顔にほっと胸をなでおろし、こんな些細なことを幸せと感じられる、この心持ちで過ごしてゆこうと心新たにしたところでした。
いやいや、夏の頃には、田んぼや唐芋畑の草とりに追っかけられ、穏やかな心持ちなど吹っ飛んでしまう自分がいる事もよくよく分かってはいるのです。

  昨年十二月から二人の子どもが就職活動に入りました。大学三年の息子と短大一年の娘です。子どもだ、子どもだ、と思っていましたが、いよいよ大人として働く時期にさしかかりました。夢を叶えるのが就職と思っている二十代。試験結果での評価、その価値観しか知らない学生の経験値。「職に就く」という事、「職をいただく」という事、このあたりの認識をどのくらい持ちえているのか、しばらくは静かに見守るしかないと思っていますが、今年は大きな選択の年となるのでしょう。
 息子が職に就く年齢になったということは、我が家にとって農業という仕事を息子が選択するのか、親とは違う職業を選ぶのか、いずれ年を経て農業という職業に辿り着くのか、いよいよ何かの結論が出てくる時期に来たということでもあります。すでに後継者が活躍するお宅を見るにつけ、我が家の着地点を思わぬわけにはいきません。「農業を取り巻く状況は厳しさを増し・・・」などという枕詞は何十年も前から変わらず、じっと待っていれば好転する時が来るのかと言えば、そんなことは決してなく、今、自分達に出きる一手を打ち続け、その親の背中が息子の視線の先に見えてくることを願いつつ働き続けようと思います。
 次の分岐点が見える。これもまた「新しい春」。皆様よき春をお迎えください。

 
                 農業共済新聞鹿児島版  2012.1.掲載


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